早稲田大学創造理工学部社会環境工学科/大学院創造理工学研究科建設工学専攻

海岸工学・マネジメント 柴山研究室

2009年サモア諸島沖地震津波

災害概要

2009年9月29日,南太平洋サモア諸島沖でマグニチュード8.1の地震が発生しました.この地震によって発生した津波は,サモア独立国と米領サモアに大きな被害を与えました.

現地調査


研究室では,10月28日から31日までサモア国立大学と共同で津波被害に関する現地調査を実施しました.現地調査の結果,以下のことが判明しました.

  • サモア諸島沿岸には地震発生後20分程度で第一波が襲来し,沿岸部での津波高さは広い範囲で5m以上であり,米領サモアでは最大で9m近くに及んでいたことが分かりました.
  • 島を取り囲むサンゴ礁のリーフの幅が広い地域では,これらのリーフ上で波が砕けながら進んでくる様子がはっきりと見え,沿岸部の住民はいち早く危険に気付き安全な場所へと避難することができました.また,リーフ上で波が砕けることによって津波のエネルギーが減衰する効果も確認されました.
  • 津波警報がかろうじて間に合った所(サモア独立国Ulutogia)でも,間に合わなかった所(サモア独立国Satitoa,米領サモアPoloa)でも,多くの人が迫ってくる津波を見て,危険を察知して逃げたと語っていました.いくつかの村では学校で津波の挙動を教える教育を実施しており,津波の危険を感じたら安全な場所へ避難するという意識が教育を受けた子供を通じて住民の中に伝わっていました.
  • サモア社会の特徴として地域社会の構造が極めて強固であり,酋長であるマタイの権限が強いことが挙げられます.被災後約1か月の時点で既に,サモア独立国のUlutogiaや米領サモアのPoloaにおいて,居住地の高地移転を決めていた村がみられました.住み慣れた村を離れることはストレスや抵抗を伴うものであるが,このマタイのリーダーシップというサモア社会の特徴が移転に際し,うまく機能していたと考えられます.

関連文献

  • 柴山知也・三上貴仁・松丸 亮・高木泰士・Faainuseiamalie Latu(2010):サモア諸島沖地震津波の調査と分析,土木学会論文集B2(海岸工学),Vol.66,No.1,1376-1380.[doi:10.2208/kaigan.66.1376]
  • Mikami, T., Shibayama, T., Matsumaru, R., Takagi, H., Latu, F. & Chanmow, I. (2011): Field survey and analysis of tsunami disaster in the Samoan Islands 2009, 6th International Conference on Coastal Structures, Yokohama, Japan, 1325-1336.