2010年インドネシア・メンタワイ諸島沖地震津波
災害概要
2010年10月25日,インドネシア・メンタワイ諸島沖でマグニチュード7.7の地震が発生しました.この地震によって発生した津波は,メンタワイ諸島(北パガイ島,南パガイ島,シポラ島)に大きな被害を与えました.
現地調査



研究室では,11月19日から20日まで横浜国立大学,バンドン工科大学と共同で津波被害に関する現地調査を実施しました.既に南北パガイ島については,日本の諸隊によって調査が行われてたので,我々はシポラ島の4つの村で調査を行いました.
- Bosua:この村ではいち早く住民が避難したために死者はいませんでした.村の中央を海岸線と平行に走る道路から海岸寄りに津波が氾濫しました.海岸での津波高さは5.8m,建物の大半が破壊されている氾濫域内での津波高さは4.1mから3.7mに分布しており,先に述べた道路上での最大遡上高は 3.8mでした(以下すべて潮位補正前の値です).
- Old-Gobik:この村では10人の方が亡くなりました.海岸付近での津波高さは6.4m,村内の建物はほとんどすべて(少し離れた1軒を除く)破壊され,流されました.建物の破壊の状況から,かなりの運動量を持って津波が来襲したと推測されます.海岸付近に家のあった二人の人は遺体が200mほど陸側に流されて発見されました.この村は低湿地の中にあり,津波は海側のマングローブの生えたSwamp(現地語ではRawa)様の地形から侵入しました.村の背後も低湿地で,沿岸道路以外の道がないため,住民は高地への逃げ道を失いました.
- Masokut:この村では8人の方が亡くなりました.村の北側の砂丘の切れ目と南側の川から村内に津波が流入しました.村の海に近い部分での津波高さは8.0m,内陸に向かって6.7m,5.6m,4.1m,3.2mなどの津波高さを計測しました.南側で一軒のみ残され,住民も助かった家は地盤高さが3.25mと,周囲りも少し高いことが幸いしたようです.
- Bere-Berilou:この村では5人の方が亡くなり,沿岸部の70軒程度の家が壊れました.被害は海岸に近い部分で起こりましたが,村の沿岸部から奥に向かって下り勾配の低地が続くため,最大遡上距離は300m程度になりました.海岸近くで津波高さは3.6m,その後,2.3m,1.3m,0.8mと低い浸水が村落の広範囲に広がりました.
関連文献
- Mikami, T., Shibayama, T., Esteban, M., Ohira, K., Sasaki, J., Suzuki, T., Achiari, H. & Widodo, T. (2013): Tsunami vulnerability evaluation in the Mentawai islands based on the field survey of the 2010 tsunami, Natural Hazards, 71(1), 851-870. [doi:10.1007/s11069-013-0936-z]